0232 山口県 鰐石の重ね岩

【Introduction of Iwakura232】Visit・Photo:2026.2.29/Write:2026.3.28


□分類:岩石信仰(広義のイワクラ)

□信仰状況:民間に祭祀されている。

□岩石の形状:岩単体

□備考:元は奇岩

□住所:山口県山口市鰐石町

□緯度経度:34°10'07.41"N 131°28'43.14"E

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山口県山口市の鰐石橋の近くの川の中には重ね岩があります。この場所は山口の町の東南の入口に位置し、出入りする旅人の歓送迎が行われていた所です。中国の詩人・趙秩が山口の景観を詠んだ『山口十境詩』には、

「鰐石生雲 禹門點額成龍 玉石流渓嵠任激衝 自是煙霞釣鰲處 幾重苔蘚白雲封」

と記されています。これを現代語に訳すと、「禹門(竜門)の滝で額を打ちつけた魚が龍になるというように、この渓谷では玉のように美しい石が流れの中で激しく打たれ、転がされています。ここはまさに霞や霧に包まれた仙境で、大きな伝説の魚(鰲)を釣るような場所であり、幾重にも重なった苔と白雲に覆われています」という意味になります。趙秩が山口を訪れたのは1372年であり、その頃にはすでにこの重ね岩が名所となっていたことがわかります。

さらに、重ね岩から南へ約6キロメートルの場所には鰐鳴八幡宮が鎮座しています。この神社は1004年に宇佐八幡宮から勧請されたと伝えられており、その際、神霊を宇佐に迎えに行き、帰途に山口湾から椹野川をさかのぼって鰐石に上陸したとき、ここまで付き従っていた鰐が別れを惜しんで鳴いたという故事により、「鰐鳴八幡宮」と名付けられたとされています。この故事に登場する「鰐石」は地名を指していると考えられますが、その「鰐石」自体が重ね岩の別名であった可能性が高いと考えられます。すなわち、重ね岩が鰐のように見えたことから、鰐が別れを惜しんで鳴いたという伝承が生まれ、重ね岩は「鰐石」とも呼ばれるようになり、さらにこの付近の地名も「鰐石」となったと整理できます。

この重ね岩は、大きな岩盤の一部の上に約3メートルほどの巨岩が載っているという特徴的な形状をしており、その巨岩には注連縄が巻かれています。毎年、注連縄を掛け替え、岩に宿る恵比須様に祝詞を奏上する岩戎祭が行われており、この祭事は地域の有志によって結成された岩戎講によって担われています。もともとは鰐に似た奇岩が観光名所となっていた事例ですが、このように民間による祭祀が行われていることから、重ね岩は岩石信仰の一例として分類しました。

 

イワクラハンター平津豊

 

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